海外でウォシュレット(温水洗浄便座)の普及が進まない理由として、文化・環境面でのハードルと、法律・規格面でのハードルがあります。
- 文化・環境面でのハードル
- 法律・規格面でのハードル(電気の規格、水道の規格、便座のサイズ、防水の規格)
海外でも温水洗浄便座を使うには、現時点で以下3つの方法が有効です。
- 海外専用の温水洗浄便座を使う
- 無電源タイプの洗浄便座を使う
- 携帯用のおしり洗浄器を使う
それぞれ詳しく解説していきます。
※「ウォシュレット」はTOTO社の登録商標です。本記事の一部で使われる「ウォシュレット」は、一般的な温水洗浄便座の意味で使用しています。
温水洗浄便座の海外展開についてのご相談は、国内外の温水洗浄便座サプライヤーと協業している株式会社Water X Technologiesまでお問い合わせください。
世界の温水洗浄便座の普及率
日本での温水洗浄便座の普及率は、以下のグラフのとおり80%を超えています。
一方で海外ではまだまだ発展途上です。
日本に次ぐ普及率を誇る韓国でも普及率は40%程度、市場規模では日本に肩を並べる中国では、都市部に限っても普及率は3%程度です。
日本と同等以上の経済圏を持つ欧米の先進国では、普及率は1%にも満たない状況となっています。
海外に温水洗浄便座を展開するためのハードル
文化・環境面でのハードルが法律・規格でのハードルをさらに詳しく見ていきましょう。
文化・環境面でのハードル
日本では温水洗浄便座は1960年代から販売されていますが、じわじわと普及していき一般家庭でよく見かかるようになったのが1990年代くらいから、公共施設でも見かけるようになったのは2000年以降の話です。
携帯電話のようなものとは全く普及のスピードが違うのですが、これは商品の特性上、商品ライフサイクルが携帯電話に比べて長いのと、実際に使ってみて良さを実感しないと使ってみようとならないことが要因だと思います。
したがって、海外でも使ってみる人が増えてないと、なかなか普及していかないという事情があります。
法律・規格面でのハードル
もうひとつのハードルとしてあるのは、法規格の面です。
もし日本で販売されている温水洗浄便座をそのまま海外でも販売することができれば、もっと早く普及が進んでいくのでしょう。
しかし、国ごとに適用される法律・規格が異なるため、日本のものを持っていってそのまま販売するということもできないのです。
法律・規格面のハードルをさらに細かく分けると、以下4つに分けられます。
- 電気の規格
- 水道の規格
- 便座のサイズ
- 防水の規格
電気の規格
温水洗浄便座は電気を使って動かすものです。特にシャワーをお湯にするヒーター、便座を温めるヒーター、乾燥のためのヒーターなどは他と比べても大きな電力を使います。
特にお湯にするヒーターは消費電力が大きく、瞬間式だと約1300Wくらい、貯湯式でも約350Wくらいです(※瞬間式と貯湯式の違いは以下の記事をご覧ください)
みなさんご存知のとおり、海外の電圧は日本の電圧とは異なります。
日本は100Vですが、お隣中国や韓国は220V、台湾は110V、アメリカは120Vです。
東南アジアやヨーロッパも220Vから240Vの地域ばかりで、日本とは異なる電圧地域ばかりなのです。
したがって、電圧に対応させるようにしないといけません。
パソコンや携帯の充電器のように消費電力の少ないものであれば、100Vから240Vまで対応できるアダプターひとつで対応できますが、上で書いたのように電力量が多いので、そういうわけにはいかず、各電圧地域向けに専用で商品を設計していく必要があります。
また、電気に対する法規制も異なります。日本だと電気用品安全法に準拠して設計して認可を受ける必要があります。
しかし、海外だと日本とは基準の異なる法規があるのです。
たとえば、ヨーロッパだと国際規格であるIEC、アメリカだとUL、中国だとGBといった具合に規格が分かれていて、それぞれその規格に基づいた認可を受ける必要があるのです。
そのときに電気回路の設計を変える必要があります。
あとは細かい話でいくと電源プラグの形状が異なるというのもあります。
世界にはこれだけ電源プラグ形状があります。
日本はType A、韓国や多くのヨーロッパはType F、台湾やアメリカはType B、香港やシンガポールはType G、中国やオーストリアはType Iというような具合に各国で異なります。
水道の規格
温水洗浄便座は水道の規格にも合致させる必要がありますが、水の規格も各国でそれぞれあります。
日本だと日本水道協会等の認可がありますが、ヨーロッパだとEN規格とそれに基づいて独自の認証制度を持っている国もありますし、アメリカだとUPCなどがあります。
水の場合、規格の中で最も温水洗浄便座の設計に影響がでるのは、逆流防止に関する考え方です。
水は上水道から一旦外に出てしまうと何らか汚染されてしまいます。
たとえば、蛇口からシンクに出た水は、出る前に比べると何らか汚染されているわけです。トイレに使う水の場合は、その汚染度は大変高くなります。
もし、そうした水が間違って上水の方に逆流したらどうなるか?あっという間に上水の中で菌が増殖して上水全体が汚染されるという結果になってしまいます。
それを防ぐために、温水洗浄便座に限らず上水道に直接接続する機器には、逆流防止装置をつけています。
汚染された水が上水に戻らないようにするものです。
実はこの逆流防止に関する法規制が日本よりもアメリカ、アメリカよりもヨーロッパの方が厳しいのです。
そのため、アメリカ向け、ヨーロッパ向けは専用の機器を中に搭載する必要あるのです。
便器のサイズ
最後に便器のサイズの問題があります。
日本、アジア、アメリカは比較的サイズが似ているものの、ヨーロッパや東南アジアは少し小さいものもあります。
下の図は日本の一般的なサイズです。便座の取り付けにはまず便座の取付穴~便器先端までの距離が重要になりますが、日本だとJISで470mmと440mmの規格があります。
一方で、ヨーロッパで販売されている中でも小さなサイズのものは、以下のようなサイズです。
これだと日本の温水洗浄便座は取り付けられません。
また、形状の問題もあります。
たとえば日本のような一般的な先端U字型形状の便器であればよいですが、海外にいくと先端がD字型のもの、四角型のものがあります。
防水規格のハードル
温水洗浄便座の防水性能は、各国の電気の規格によって定められていますが、一般的に日本より厳しくなっています
日本では、トイレは以下のように個室に設置されているのが当たり前です。
しかし、中国では、以下の写真のようにお風呂や洗面台と一緒になっているケースがほとんどです。
そのため、温水洗浄便座が高い湿気にさらされたり、水しぶきがかかったりするケースが考えられます。
こうした実情を踏まえて、海外では温水洗浄便座に対して日本よりも高い防水規格が適用されているのです。
国際的な防水規格の等級では、以下のような違いがあります。
日本の防水等級
IPX3:鉛直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない
中国の防水等級
IPX4:あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない
このようにシャワーの水をかけても温水洗浄便座の機能に問題ないかを確認しています。
写真の試験は、過酷な環境下での信頼性を確かめる目的での試験なので、実際の使用場面でシャワーの水をかけても問題ないことを保証するものでありません。
海外でもおしりを洗う3つの方法
温水洗浄便座を海外でも使うためには、以下3つの方法をがあります。
海外専用の温水洗浄便座を使う
1つめは、海外専用品を購入する方法です。
たとえば、以下の商品なら電圧220Vの地域であれば、使用することができます。
無電源タイプを使う
電源不要の無電源タイプを使う方法もあります。
特に常夏の東南アジアでは、一般的に販売・使用されている商品でもあります。
無電源でもシャワーが動く仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
さらに詳しく⇒ 無電源タイプの温水洗浄便座の仕組みは?
携帯用のおしり洗浄器を使う
海外旅行をするときに携帯する人も多い携帯用おしり洗浄器を使う方法もあります。
まとめ
海外でもお尻を洗いたいなら、以下3つの方法をトライしてみましょう。
- 海外専用の温水洗浄便座を使う
- 無電源タイプの洗浄便座を使う
- 携帯用のおしり洗浄器を使う
近年では日本、韓国に続いて、中国でも浸透が始まってきており、販売台数で見るとすでに中国は日本を追い抜いています。
このようにある国で浸透することで、また別の地域での浸透が始まるという連鎖が始まっていくことでしょう。
そうなると、国ごとの特性にあわせた製品が増えていき、ますます世界での浸透が進んでいくのでしょう。
温水洗浄便座の海外展開についてのご相談は、国内外の温水洗浄便座サプライヤーと協業している株式会社Water X Technologiesまでお問い合わせください。