汚物やトイレットペーパーのつまりは、次のような道具があれば、自分でも解決可能です。
- ラバーカップ
- ペットボトル(2Lなど大きめのものがベター)
- 食品用ラップフィルム
- 針金ハンガー
この記事では、家にある道具を使ってトイレのつまりに対処する方法を、写真と動画付で、元便器設計者が解説していきます。
トイレつまりの主な症状
一般的にトイレがつまったときに起こる症状として、便器内の水位が上がってくることが挙げられます。
この状態でトイレを流し続けると、便器内の汚れた水が溢れて床が水浸しになってしまうので、むやみに流さないようにする必要があります。
トイレのつまりは放置したままで自然に直ることはないので、つまりを直すための適切な処置を施す必要があります。
トイレの構造とつまりやすい箇所
トイレがつまる原因を正しく理解するには、便器の構造を知る必要があります。
以下の写真は代表的な便器の構造です。
便器の排水路はカーブ状になっていて、一度上向きになってから下に降りていく構造をしています。
この構造によって、便器の中に水を溜めることができ、この水が下水管から上がってくる嫌なにおいや、虫を防ぐ役割をしています。
トイレのつまりは、この排水路を途中に障害物ができてしまうことで起こります。
以下の写真のように、トイレットペーパーが頂点を通過できずに閉塞を起こしてしまうパターンがよく見られます。
トイレによくつまるもの
トイレをつまらせた経験がある100人を対象にしたアンケートをもとに、トイレのつまり原因を見ていきましょう。
- トイレットペーパー
- 大量の便
- その他(タバコの箱、消臭スプレーのキャップ、ティッシュペーパー、子供のおもちゃ
猫砂など)
第1位:トイレットペーパー
圧倒的1位がトイレットペーパーの使いすぎです。
アンケートに回答した100人のうち、実に74人がトイレットペーパーをつまらせたと回答しています。
大量のトイレットペーパーが便器の排水路を塞ぐことで、つまりが起きてしまうのです。
第2位:大量の便
2番目に多かったのが、大量の便によってつまるケースでした。
アンケートに回答した100人のうち、23人が便と回答しています。
便秘などの影響で大量の便が出たときにトイレをつまらせてしまう他、健康診断で飲んだバリウムの便をつまらせてしまうことがあります。
その他
トイレットペーパーや便以外では、以下のような回答がありました。
- タバコの箱
- 消臭スプレーのキャップ
- ティッシュペーパー
- 子供のおもちゃ
- 猫砂
キャップやおもちゃのように固形のものは、つまらせると簡単に取り除けなくなるので注意が必要です。
ティッシュペーパーは、固形のものよりは深刻な事態にはなりにくいですが、水に溶けないのでトイレに流すべきものではありません。
猫砂は、トイレに流せると書かれていることもありますが、トイレはJIS(日本工業規格)でトイレットペーパーと便を流すことを前提に設計されているので、流す際には注意が必要です。
自分で直せるトイレのつまり
基本的にトイレットペーパーや大便のつまりは自分で直すことができます。
以下、便器がつまっている状態をもう1度見てみましょう。
このつまっているところに対して、便器の入り口から圧力をかけてあげれば、たいていのつまりは解消されて排水管の方に流れていきます。
トイレットペーパーや便は、時間が経てば次第に溶けていくので、圧力をかけて押し込んでも排水管にトラブルが起きる心配はありません。
自分でトイレのつまりを直すときに使える道具
自分のトイレのつまりを直すときには、以下のような道具が役立ちます。
- ラバーカップ
- ペットボトル(2Lなど大きめのものがベター)
- 食品用ラップフィルム
- 針金ハンガー
ラバーカップ
王道はラバーカップです。
ラバーカップは、トイレのつまりを直すために作られているものなので、最も手軽にトイレのつまりを直すことができます。
もし、ラバーカップがないなら、緊急時のために1つ常備しておくことをおすすめします。
ペットボトル
ラバーカップがない場合は、ペットボトルがおすすめです。(500mlのペットボトルでもよいですが、できれば1.5Lや2Lなど大きめのペットボトルを使うのをおすすめします。)
ペットボトルの底を切って、キャップを閉めます。
切り口の方を便器の排水口に向かって押し込むことで、ラバーカップと同じような働きをしてくれます。
つまりの具合によっては、少し強めに圧力をかける必要があるので、水が飛ばないように袋を上から被せてもよいでしょう。
以下、実際にペットボトルを使って、つまりを解除している様子です。
以下の動画もあわせてご覧ください。
食品用ラップフィルム
ペットボトルもない場合は、ラップフィルムを使いましょう。
ラップフィルムで、便器の上面に完全にフタをしてしまいます。
シャワートイレなどの便座があると上手に便器を密閉できない可能性があるので、便座を外した方がよい場合もあります。
便器の上面をラップフィルムで密閉した状態で、圧力を加えていきます。
ペットボトルに比べると強い圧力をかけにくいのがデメリットです。
針金ハンガー
針金ハンガーもつまり解決に使える道具です。
針金ハンガーは、圧力を加える目的ではなく、トイレットペーパーや便を細かくして流しやすくする目的で使います。
ただし、針金ハンガーは、トイレットペーパーや便が排水路の奥の方でつまっているときに届きにくくなるというデメリットがあります。
ハンガーはペンチ等で切ってもよいですし、結び目もほどいて使ってもよいです。
少し曲げると、便器の排水路の中で引っかかりにくくなります。
以下、実際にペットボトルを使って、つまりを解除している様子です。
以下の動画もあわせてご覧ください。
自分でトイレのつまりを直すときの手順
自分で直すときの手順は以下のとおりです。
作業中にトイレの床や壁、衣服を汚して嫌な思いをしないように、準備を万端にしてから取り掛かりましょう。
- 床にビニール袋を敷く
- 道具を処理・処分するためのビニール袋を用意する
- ゴム手袋またはビニール手袋を手につける
- つまり解除の作業をする
床にビニール袋を敷く
床に便器の水が飛び散るおそれがあるので、作業を始める前にビニール袋を床に敷いておきましょう。
道具を処理・処分するためのビニール袋を用意する
ペットボトル、ラップフィルムなどは汚れた水に直接触れるものです。
汚れた水が飛び散らないように、使った後に速やかに処分できるように処分用のビニール袋を用意しておきましょう。
ゴム手袋またはビニール手袋を手につける
作業中は手も汚れますので、ゴム手袋またはビニール手袋をつけましょう。
なければ、ビニール袋を手に巻くだけでもよいです。
つまり解除の作業をする
準備ができたら、つまり解除の作業です。
上記、各道具のところで解説したように道具を活用して、つまりを解除します。
【注意!】おすすめしない方法
インターネット上には、上記以外にも様々な方法が紹介されていますが、おすすめできない方法もあります。
バケツで水を流し込む
バケツの水を勢いをつけて便器に流し込むことは、つまりのメカニズムから考えると理にかなってはいます。
しかし、十分な圧力がかからないと、つまりを解消することができないまま、バケツの水が便器から溢れ出てしまう可能性があります。
有効な方法ではありますが、失敗したときのリスクを考えると、おすすめできる方法ではありません。
お湯や薬剤を使う
お湯を使うとたしかにトイレットペーパーを溶かしやすくなります。
しかし、便器は割れ物の陶器でできているので、お湯の熱が加わることで割れる可能性があります。
洗面台に使われる陶器は、蛇口からお湯が出ることを前提に設計されていますが、便器はお湯を使うことを想定して設計されていません。
万が一便器がヒビ割れると漏水に繋がってしまうので、新しい便器に交換しなければなりません。
また、薬剤も便器表面にある防汚加工を傷つける恐れがあるので、やはりおすすめできない方法です。
自分では直せないトイレのつまり
トイレットペーパーや便以外のつまりを自分で無理に直すのは危険です。
たとえば、先ほどの事例の中だと以下のようなものです。
- タバコの箱
- 消臭スプレーのキャップ
- 子供のおもちゃ
これらの固形物は、仮に便器から排水管の方に押し出せて一瞬直ったように見えても、将来的にトイレットペーパーや便を頻繁に詰まらせる原因になってしまいます。
そうなると、便器を取り外して排水管を工事するなどの大規模な修理に発展してしまうかもしれません。
このような状況に陥る前に、トイレ修理の専門業者にお願いすることをおすすめします。
トイレのつまり予防法
トイレをつまらせないようにするための注意点です。
- トイレットペーパーを使いすぎない
- 自己流の節水をしない
- トイレットペーパーと便以外を極力流さない
トイレットペーパーを使いすぎない
トイレットペーパーを大量に使うと、つまりやすくなってしまいます。
便の状態によっては、トイレットペーパーを大量に使いたくなるときもありますが、折りたたんで何度も使うなどして、大量のトイレットペーパーを流さなく済むような工夫も必要です。
自己流の節水をしない
トイレは適切な水量のときに汚物を効果的に流せるように設計されています。
ペットボトルをタンクに入れるなどして自己流の節水をしてしまうと、トイレが詰まる原因になってしまいますので、自己流の節水はやめるようにしましょう。
レストルーム工業会のホームページにも以下のように記載されています。
タンクの中には何も入れないでください。
タンクの容量は、便器に応じて必要な水量として設計されています。この水量が足りないと、便器の洗浄が十分できなかったり、便器や排水管内で汚物が詰まり、汚水があふれて家財などをぬらす財産損害発生のおそれがあります。
また、タンク内の機器と接触したり、動作に干渉し、水漏れ・止水不良などを起こす原因になることも考えられます。
節水をご希望される場合は、あらかじめ少ない水量で流せるように設計された節水便器をご利用ください。レストルーム工業会ホームページより引用
トイレットペーパーと便以外を極力流さない
先ほども書いたように、トイレはトイレットペーパーと便を流すことを前提に設計されており、JIS(日本工業規格)でも、それ以外のものを流すことは想定されていません。
市販されている商品の中には、「そのままトイレに流せる」と表示している商品もありますが、そうしたものは極力流さないようにするか、流す場合も少しずつ流すなどするようにしましょう。
また、水に溶けないタイプのトイレットペーパーにも注意しましょう。
まとめ
以上、トイレのつまりを自分で直す方法について解説しました。
- ラバーカップ
- ペットボトル(2Lなど大きめのものがベター)
- 食品用ラップフィルム
- 針金ハンガー
自分でつまり除去をするときは、作業中にトイレの床や壁、衣服を汚して嫌な思いをしないように、準備を万端にしてから取り掛かりましょう。
- 床にビニール袋を敷く
- 道具を処理・処分するためのビニール袋を用意する
- ゴム手袋またはビニール手袋を手につける
- つまり解除の作業をする
なお、バケツで水を流し込んだりお湯や薬剤を使ったりすると、別の被害を生む可能性があるので、これらの方法はおすすめしません。